コロナ禍、
医療現場が逼迫し、社会全体が不安に包まれていたあの頃。
病院を辞めた後に、
「今、看護師として何ができるんだろう」と考えていました。
そんな時に出会ったのが、
「派遣看護師として保健所で働く」という選択肢でした。
👉前回記事:病院を離れて働いた看護師が、コロナ禍の保健所で感じたこと【体験談】
この記事では、
保健所での働き方の特徴や条件、向いている人などを解説します。
正規職員は「保健師」が中心
多くの自治体で、保健所の正規職員として配置されているのは保健師です。
地域住民への健康支援や感染症対策、母子保健など、
「予防」「支援」「行政対応」が主な役割になるため、
公衆衛生を専門的に学んだ保健師資格が求められるケースが一般的です。
そのため、看護師資格のみで正規職員として採用される例は多くありません。
看護師の求人は「非常勤・臨時・派遣」が多い
一方で、看護師資格で働ける保健所関連の求人が全くないわけではありません。
見られるのは主に、
- 臨時職員
- 会計年度任用職員
- 産休・育休代替
- 派遣職員
といった期間限定・補助的なポジションです。
看護師として担うことの多い役割
看護師として関わる場合、業務内容は以下のようなものが中心になります。
- 電話や窓口での健康相談・聞き取り
- 感染症対応に関する連絡・調整
- 記録や事務作業の補助
- 保健師の指示のもとでの業務サポート
- 健診や保健指導の補助
判断の最終責任は保健師が持ち、
看護師はチームの一員として支える立場になることが多いのが特徴です。
病院勤務との大きな違い
一般的に、保健所での働き方は病院と比べて、
- 直接的な医療処置はほぼない
- デスクワークや電話対応が中心
- 日勤のみ・土日祝休みの求人が多い
- 行政としての「ルール」や「記録」が重視される
といった傾向があります。
「命の現場」からは少し距離があるものの、
地域全体を支える視点の仕事だと感じる人も多いです。
実際の求人例
ここで、実際の求人例を見てみましょう。
A保健所
雇用形態 会計年度任用職員(保健師等)
任用期間 1会計年度以内 20XX年4月〜20XX年3月
業務内容 母子保健事業又は特定保健指導等に関する業務
勤務日 月曜日から金曜日まで
休日 土日祝及び年末年始
勤務時間 8時30分から17時の1日7時間45分勤務(休憩時間45分)
給与 月額 238,200円 ~ 241,400円、日額 11,342円 ~ 11,495円、時間額 1,463円 ~ 1,483円
応募資格 年齢・学歴不問
応募要件・資格等 保健師、看護師又は助産師資格のいずれかを有するもの
B保健所
雇用形態 臨時的任用職員(産休代替職員)
雇用期間 雇用期間の定めあり(4ヶ月未満) 20XX年1月〜20XX年3月
業務内容 地域保健等業務
- 健康相談
- 面接
- 家庭訪問
- 地域保健関連業務
C保健所
雇用形態 パート労働者
雇用期間 雇用期間の定めあり(4ヶ月以上)20XX年4月1日〜20XX年3月31日
業務内容 ヘルスアドバイザー業務
- 育児相談及び相談結果に基づく指導、支援方針についての判
断 - 母子健康手帳の交付及び妊娠子育てプランの作成
- 特定健診結果についての説明及び保健指導
- 各種申請書の内容確認 等
給与 日給11,831円〜12,904円
求人例から見える傾向
A〜Cの求人例を見てわかるのは、
保健所における看護師の採用は「正規職員」よりも「期間・条件付き」が中心という点です。
雇用形態は「期間限定」が基本
3例すべてに共通しているのは、
任用・雇用期間があらかじめ決まっていることです。
- 会計年度任用職員(1年以内)
- 産休代替の臨時的任用(数ヶ月)
- 年度単位のパート勤務
いずれも「恒常的な人員」というより、
事業対応・欠員補充・業務量増加への対応として募集されている印象が強いです。
契約延長の可能性有りの求人もありますが、産休代替などの臨時雇用では産休・育休から復帰した際には契約終了することになります。
保健所では、正規職員(多くは保健師)が中核を担い、
その周辺を期間職員・非常勤が支える構造が見えてきます。
業務内容は「医療行為」ではなく「地域保健」
どの求人にも共通しているのが、
注射・処置といった医療行為が前提になっていない点です。
- 母子保健、特定保健指導
- 健康相談、面接、家庭訪問
- 育児相談、健診結果説明、各種申請対応
つまり求められているのは、
病気を治す看護ではなく、生活に寄り添う支援。
病院での経験は活かせる一方で、
「医療スキルそのもの」より
聞き取り力・説明力・判断力・記録力が重視されていることがわかります。
勤務時間は規則的、夜勤なしが基本
3例すべてに共通して、
- 平日勤務
- 土日祝休み
- 日勤帯のみ
- 夜勤なし
という条件がそろっています。
これは保健所業務が行政サービスとしての時間帯に合わせて運営されているためです。
そのため、
生活リズムを整えたい人・夜勤から離れたい人にとっては大きなメリットといえます。
デスクワーク・PCスキルは必須に近い
B・Cでは明確に
Word・Excel(場合によってはPowerPoint)の記載があり、
パソコンを使えることが前提となっています。
保健所業務では
- 記録
- 報告書
- データ入力
- 他部署との情報共有
が多く、
看護師でも事務能力が求められる職場であることが読み取れます。
給与体系は自治体・雇用形態で差が大きい
- 月給制・日給制・時間給制が混在
- 同じ看護職でも金額に幅がある
これは、自治体ごとの条例・財政・雇用区分の違いによるものです。
病院のように
「夜勤手当で一律高収入」
という構造ではなく、
安定性と引き換えに収入は抑えめになりやすい傾向があります。
求人から見える全体像
これらの求人例から見えてくるのは、
- 正規職員(保健師)+期間・非常勤職員で成り立つ
- 看護師は地域保健を支える“実務の担い手”として募集される
- 働き方は規則的・日勤・行政ペース
- 求められるのは医療技術より「判断・説明・調整・記録」
という特徴です。
どんな人に向いてる?
保健所での看護師の働き方は、
合う人にはとても合う、でも合わない人にはつらい仕事です。
特に向いているのは、こんな人だと思います。
- 夜勤のない生活に切り替えたい
- 人の生活背景まで含めて関わりたい
- 目の前の処置より「判断」や「調整」にやりがいを感じる
- 感情をぶつけられても、ある程度切り替えられる
- チームで役割分担しながら動くのが苦じゃない
逆に、
- 自分の手でケアした実感がほしい
- テキパキ処置をして達成感を得たい
このようなタイプの人には、物足りなさを感じやすいかもしれません。
病院経験はどう活きる?
保健所の仕事は医療行為こそ少ないものの、
病院での看護師経験が土台として活きる場面はとても多いです。
たとえば、
- 電話や面談での聞き取りの場面で症状の重さをイメージできる
- 「この訴えは危ないかもしれない」と気づける
- 医療機関へのつなぎが必要な際、受診の緊急性を説明できる
- 医師・医療機関側の視点がわかる
- 不安の強い人への対応で、病棟で培った説明力・共感力が役立つ
特に私が経験したコロナ対応の現場では、
「医療がわかる人が一次対応にいる」こと自体で説得力があったり、
正しい医療に繋げることができていました。
処置はしなくても、
看護師としての知識と経験は確実に活きる現場です。
注意点・ギャップ
一方で、実際に働いてみて
「思っていたのと違う」と感じやすい点もあります。
とにかくペーパーワークが多い
- 記録
- 報告書
- 入力作業
- 書類の確認・修正
「人と関わる時間」以上に書類と向き合う時間が長い日も珍しくありません。
病院の電子カルテとはまた違う、行政独特の様式・ルールに戸惑う人も多いです。
線引きがむずかしい
保健所は「支援」はするけれど、すべてを引き受ける場所ではありません。
- どこまで関わるのか
- どこからは別機関につなぐのか
- どこで区切るのか
この線引きが曖昧なケースも多く、
「もっと何かできるのに…」という無力感を感じやすい場面もあります。
感情労働の比重が高い
行政機関ならではの、クレーム、怒り、不安、孤独。
そうした感情を真正面から受け止める場面が多く、
身体的な忙しさより精神的な疲れが残る場面もあります。
正規登用を前提にしにくい
多くの求人が期間限定のため、
- 更新があるかは不透明
- 正規職員への道は狭い
- 将来設計が立てづらい
という現実もあります。
「長く安定して勤めたい」場合は、
保健師資格の有無が大きく影響する点は知っておいたほうがいいでしょう。
それでも、選択肢として知っておいてほしい
保健所での看護師の仕事は、
- 病院とはまったく違う
- 看護の形も違う
- 評価される力も違う
でも確実に、
「病院=看護師」だけじゃない世界を見せてくれます。
一度病院を離れて、
「こういう働き方もあるんだ」「病院で体力使って働くよりあっている」
と気づけることも多いです。
転職先として選ぶかどうかは別としても、
知っておくだけで視野は確実に広がる働き方です。
どこで求人が見つかる?
保健所で働く看護師の求人は、
一般的な転職サイトにたくさん載っているというよりも、
限られた場所に出ている印象でした。
実際に多く見つかったのは、次のようなところです。
- ハローワーク
- Indeed(掲載元がハローワークのもの)
- 自治体案件を扱う派遣会社
特に会計年度任用職員や臨時的任用職員といった求人は、
ハローワークが一次情報になっているケースが多いです。
Indeedで見つけても、よく見ると「掲載元:ハローワーク」となっていることも少なくありません。
また、産休代替や期間限定の募集、コロナ対応などの応援要員は、
派遣会社経由で募集されることも多いのが特徴です。
そのため、
「転職サイトを見ても全然出てこない…」と感じたら、
やり方が間違っているわけではなく、
探す場所が少し違うだけかもしれません。
保健所の仕事に興味がある場合は、
ハローワークや派遣会社も含めて探してみると、
選択肢がぐっと広がると思います。
「保健所 看護師」で検索してみてください。
看護師の求人・転職・派遣ならMC─ナースネットまとめ
保健所の正規職員の多くは保健師で、
看護師は期間や役割を限定した形で関わることが多いのが現状です。
また、仕事内容も病院とは大きく異なります。
患者さんに直接触れることは少なく、
電話対応、聞き取り、記録、調整、連携が中心で、
「同じ看護師でも、こんなに違うんだ」と戸惑う人もいると思います。
それでも、
これまで病院で培ってきたアセスメント力や判断力、
不安を受け止める力は、確かにここで活かすことができます。
目立たなくても、前に出なくても、
必要とされる看護師の役割があると感じられる場面もあります。
「病院を離れたら、看護師じゃなくなる気がする」
そんな不安を抱えている人にこそ、
知ってほしい働き方かもしれません。
「看護師=病院」ではありません。
保健所での仕事は、
看護師としての形を少し広げてくれるひとつの選択肢だと思います。
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