「どうして看護師になろうと思ったのか」
「どうして看護師になろうと思ったんですか?」
この質問、看護師なら一度は聞かれたことがあると思います。
進路面談、就職面接、実習中、雑談の中でも。
そして多くの場合、期待されている答えは決まっています。
「人の役に立ちたくて」
「患者さんに寄り添いたくて」
「看護にやりがいを感じていて」
でも、正直に言うと、
私はそのどれでもありませんでした。
医療職が身近にあった家庭環境
私の両親は、どちらも医療従事者です。
母は看護師、父は放射線技師でした。
ただ、父は半身麻痺があり、私が物心ついた頃には現場で働いていませんでした。
そのため、
「医療職として働く姿」を日常的に見ていたのは母だけです。
私が小さかった頃、母は家の近くの小さなクリニックで働いていました。
学校帰りに家の鍵を忘れて家に入れず、職場に受け取りに行った時、
母の働く姿を見ることがありました。
私がある程度大きくなってからは夜勤のある病院で働いていたため、
夜は時々父と子どもだけの時間がありました。
生活は成り立っていた
我が家は、決して超裕福な家庭ではありませんでした。
それでも、いわゆる一般家庭といえる環境だったと思います。
家族4人で住む家があり、
好きな食べ物を買ってもらえて、
学校にも通わせてもらえていました。
母の収入がメインであったにも関わらず、
家計が逼迫しているようには見えなかったし、
「生活が困窮する」ようなことはありませんでした。
その状況を見ていて、
私は漠然とこう思うようになりました。
「看護師って、一家を支えられる職業なんだ」
これが、私の中で一番大きかった動機です。
看護師になるための学校選び
進路を考える時期になって、
私は特別「大学に行きたい」という気持ちはありませんでした。
調べると家から近いところに公立の看護専門学校があり、
学費の負担も大学に比べてかなり少ないことを知りました。
「家庭に無理をさせてまで大学に行きたい」という思いもなく、
3年で資格を取って働けるなら、それでいいと思いました。
こうして私は、
看護専門学校に進学しました。
二度と戻りたくない、看護学校の3年間
看護学校の3年間は
今でも「二度と戻りたくない」と思う時期です。
勉強、実習、記録。
常に何かに追われていました。
特に実習は地獄でした。
私は自分の考えを瞬時に言葉にするのが得意なタイプではありませんでした。
考えながら話す、というのができずに実習で先生や指導者に質問されたときに
頭の中で考えを整理してから答えようとしている間に話が進んでしまい、
それが「分かっていない」と判断されて
さらに追い込まれることもありました。
正直、かなりつらかったです。
それでも「ここで辞めたら何も残らない」と思って、
家族に支えられながら、なんとか3年間をやりきりました。
周りと感じたギャップ
正直言ってしまえば、私は
人の役に立ちたい、とか
人と関わるのが好き、とか
そんな気持ちで看護師を目指したわけではありません。
動機はとても現実的でした。
- 自立できる
- 万が一のとき、家族を支えられる
- 仕事に困らない
ただそれだけです。
むしろ人と関わることやコミュニケーションは苦手な方でした。
周りが、
「高齢者と関わるのが好きなんだ」
「患者さんかわいいよね」
「やりがいあるよね」
と言っているのを聞いて、
「そうなんだ……?」
と、全然共感できず、
こういう人が理想的な看護師なんだろうな…と思っていました。
自分のスタンスが看護師として必ずしも悪いわけではなかった
ただ、これは後になって気づいたことですが、
コミュニケーションや人と関わるのが特別好きではないことは、
必ずしも欠点ではありませんでした。
病棟から手術室に異動したとき、
- 患者さんと関わる時間が比較的短い
- 黙々と正確に作業を進める
- コミュニケーションは最小限
そんな現場は驚くほど自分に合っていました。
「看護師はこうあるべき」という理想像を無理に自分を当てはめなくていいのかも。
そう思えた経験でした。
「看護師向き」に見える人が正解ではない
たまに、
「この人、看護師になるために生まれてきたんだろうな」
そう思う人に出会うことがあります。
「人の役に立つことにやりがいを感じる」
「人とも関わりが好き」
素晴らしいことだと思います。
でも、私はそれが
必ずしも看護師の正解だとは思いません。
どんな理由であれ、
看護師になろうと決めて
眠れないくらい勉強して
必死になって実習を乗り越えて
血の滲む努力の末国家試験に合格した
その期間は、
強い意志がなければ続けられなかったはずです。
立派な志がなくても、なっていい
私がこの記事で一番伝えたいのは、これです。
「立派な志がないのに、自分本位な理由で看護師を目指していいの?」
そんな不安を持つ人に、
「立派な志なんて、別になくてもいい」
と伝えたいです。
たとえ動機が自分のためでも、
看護師になって、社会に貢献するという事実は変わりません。
逆に、高い志を持っているが故に
やりたい看護ができなくて悩むこともある。
臨床がつらくて、辞めたくなることもある。
それでも、看護師資格は一度取ってしまえば一生ものです。
病院を辞めたいと思ったとき、辞めるという選択肢を持てる。
引く手あまたで、最悪仕事に困らない。
これは、現実的に見てとても大きな強みです。
看護師資格を取ったことに、後悔はしていない
私は、
自分が看護師になった理由が立派だったとは思いません。
仕事がつらいと思ったこともたくさんあります。
でも、
看護師資格を取ったことを後悔したことは、一度もありません。
それだけで、
人生の選択肢が確実に増えたからです。
もし今、
志がなくて不安な人や、
「こんな理由で看護師を目指していいの?」と悩んでいる人がいるなら、
伝えたい。
理由は何でもいい。
看護師資格を取って後悔することはないと思います。
やりたいという意志があるなら、
誰かに誇れる理由じゃなくてもいい。
自分が納得できる理由があれば、それで十分だと思います。
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