看護師として働いていると、
「病院以外で働く自分」がなかなか想像できない人も多いと思います。
私もその一人でした。
正社員として病院で働き、
忙しさも、個人の責任の重さも、理不尽さも、人手不足も、
「看護師だから仕方ない」と受け入れてきました。
そんな私が病院を離れ、
コロナ禍という特殊な状況の中で
空港検疫という公的機関の期間職員として働くという経験をしました。
コロナ禍に公的機関で働いた経験は、
私の看護師としての価値観を大きく揺さぶるものでした。
この記事では検疫の業務内容そのものではなく、
病院とはまったく違う場所で働いたことで感じたこと・考えが変わったことを
体験ベースで書いていきます。
空港の検疫で働くことになった経緯
私が病院を退職したのが2020年6月。
その年の1月に国内で初めて感染者が発見され、2月にはダイヤモンド・プリンセス号船内での集団感染などが話題となり、コロナ感染拡大の時期でした。
5・6月は病院には在籍していましたが有休消化期間中で、自宅で次の職場を探していました。
最初は正社員の求人を探していましたが、
「コロナが落ち着いたらワーキングホリデーに行こう」
と決めてからは、正社員ではなく期間限定募集や派遣、アルバイトの求人を探すようになりました。
その中で
「空港検疫 期間職員 (看護師)」
という募集をハローワークの求人ページで見つけました。
元々、新しい経験や貴重な経験には飛び込みたくなる性格で、
「検疫で働ける機会なんてないだろうから…」
と思い、思い切って応募しました。
「検疫で働く」と聞いて思い浮かべていたイメージ
空港の検疫と聞くと、
- どんなことをするのか想像がつかない
- 公的機関だからみんなお堅い感じで厳しそう
- 緊張感が張りつめていそう
- 判断ミスが許されなさそう
- 夜勤や不規則な勤務があるのでは
そんなイメージを持っていました。
また、
「病院以外で看護師としてやっていけるのか」
という気持ちも正直ありました。
病院では、忙しくても理不尽でも、
「現場だから」「命を預かっているから」というプレッシャーの中働いてきました。
業務内容は学校で習った知識や技術をベースに使い、日々勉強しながら業務をなんとかこなしていました。
でも、検疫の業務はどんなことをするのかなんて、学校で習ったこともなければ職場で聞いたこともありません。
「国を守る」というプレッシャーの中働いたこともありません。
正直、不安でいっぱいでした。
実際に感じた、病院との“前提の違い”
一番強く感じたのは、
仕事に対する“前提”そのものが違うということです。
病院では
- 常に臨機応変
- イレギュラー対応が当たり前
- 人手不足は「現場で何とかする」
- 個人の責任が重くのしかかる
公的機関(検疫)では
- ルールと役割が明確
- 個人プレーより「組織として動く」意識
- 業務に関して何かあれば勝手に行動せずに上司に相談
- 判断を一人で抱え込まない
「どちらが良い・悪い」ではなく、
求められるスタンスがまったく違うと感じました。
看護師として求められるものの違い
病院では、
- テキパキ動ける
- 忙しさに耐えられる
- 感情労働も引き受けられる
そんな力が強く求められます。
一方で検疫の現場では、
- 正確さ
- 冷静さ
- ルールを守る姿勢
- 感情を切り離して淡々と対応する力
が重視されているように感じました。
「患者さんに寄り添う」看護とは、また違うベクトルの専門性がそこにはありました。
看護師の価値は、必ずしも“体力と精神力”だけではないと初めて実感しました。
「守られている」と感じた働き方
病院では、
- 忙しいから仕方ない
- 人がいないから我慢
- 誰かがやらなきゃ回らない
そうやって、無理が積み重なっていきます。
検疫に関わる公的機関では、
- 想定外の事態の時は勝手に判断せず上に指示を仰ぐ
- 個人に責任を押し付けない
- 公的機関として間違った対応をしないよう慎重に動く
- ルールを守ること自体が評価される
という空気がありました。
もちろん、コロナ禍で期間職員として短期間しかいなかった私にはわからないような、
検疫ならではの大変なことはあると思います。
それでも、「公的機関」で「組織」として働く意識は、
「日本を守る公務員」として個人が守られているように感じました。
メリット・デメリットは人による
先で述べたことは、私としては良い仕組みに思えましたが、
例えば自分で判断して臨機応変に動きたいような人にはデメリットになります。
また、コロナのような未知の感染症に対して、変異するウイルスによって日々変わるルールや対応あ
他にも、私個人的に大変だったことがいくつかあります。
夜勤
私は夜勤が合わない体質のため、体調を崩さないかヒヤヒヤしながら働くのがつらかったです。
しかし、期間職員という立場だったため、他の方とシフト交換してもらって柔軟に対応していただけたので実際は2回ほどしか夜勤はしませんでした。
しかし正規雇用で検疫官をするなら避けて通れないかもな、と思いました。
※全ての検疫官に夜勤があるわけではありません。
迷子になりがち
国際空港は広い上に、職員が入る場所はテロ対策なども兼ねて複雑な構造で、
似たような壁で見分けがつきづらくなっており、まるで迷路のようになっていました。
特に方向音痴で来た道を戻るのが困難な私は、
慣れるまでだいぶ苦労しました…
1日10,000歩で健康!?
空港ってたくさんの飛行機が離着陸する場所で、ゲートもたくさんありますよね。
特に国際空港は広く、端から端まで行くのに何分もかかることも…
1回の勤務で必ず10000歩を記録していました。
私は歩くのは苦ではなく、むしろ健康にいいな♪くらいに思っていましたが、
足腰に問題がある場合は国際空港を歩き回るのはきついかもしれません…
病院にいたら、きっと気づけなかったこと
もし病院を辞めずにいたら、
忙しさに慣れて疲れていることにも気づかず、
「これが普通」と思い込みんで疑問を持つ余裕すらなかったと思います。
検疫という病院とは全く違う場所で働いたからこそ、
- 看護師の資格の使い道は一つじゃない
- 医療に関わる形はさまざま
- 合わない環境で無理を続ける必要はない
そう思えるようになりました。
「病院を辞める=逃げ」ではなかった
病院を離れる決断をしたとき、
心のどこかで少し「逃げなのかもしれない」と感じていました。
でも実際に病院以外で働いてみて、見えたのは看護師としての全く違う働き方でした。
逃げたのではなく、視野を広げただけだった。
そう思えました。
病院の外を知ったことで、
看護師としての自分を否定するどころか、
「自分に合う働き方を考えていいんだ」と思えるようになりました。
公的機関で働く経験が教えてくれたこと
検疫に関わる期間職員としての経験は、
- 働き方を一度リセットする時間
- 看護師という職業を客観的に見る機会
- 自分を守る選択肢を知る経験
だったと感じています。
病院しか知らなかった頃よりも、
今の方が「看護師であること」を前向きに捉えられています。
まとめ|病院の外を知ることは、看護師を辞めることじゃない
空港検疫で働いた経験は、
私にとって「看護師を辞める経験」ではありませんでした。
看護師のまま、別の世界を知った経験です。
- 今の働き方がしんどい
- でも辞めるのは怖い
- 他の選択肢を知らない
そんな人ほど、
一度「病院の外」を知ってみてほしいと思います。
それは逃げではなく、
自分を守りながら働き続けるための選択肢の一つです。
※本記事は、筆者個人が空港検疫に関わる期間職員として働いた経験をもとに、感じたこと・考えたことを記しています。
業務内容等の詳細は記載していません。
次回記事
👉看護師として働く「検疫官」という選択肢|仕事内容・働き方・向いている人を解説
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